2014-02-05

洗車・コーティングと酸

酸は金属汚れを溶解します。金属汚れとは、鉄(鉄酸化物)や金属イオン(カルシウム塩やマグネシウム塩など)、シリカ(SiO2)が付着した状態です。


酸というと何が思い浮かぶでしょうか。台所にある食酢・クエン酸や、理科の実験室では、塩酸・硫酸などがなじみ深いところでしょうか。

酸性洗剤として思い浮かぶものに「サンポール」(大日本除虫菊)や「トイレのルック」(ライオン)などがあります。これらの酸性洗剤は、主に便器に付着した尿石汚れを洗浄する目的で酸の溶解力が使用されています。

便器の汚れである尿石は、人の尿に含まれる成分に由来するカルシウム塩(炭酸カルシウムなど)が固着・堆積したものです。カルシウム塩は水には溶けにくく、溶解洗浄するには酸が有効です。酸の中でも、無機酸である塩酸やスルファミン酸の溶解力が優れています。


サンポールには塩酸が、トイレのルックにはスルファミン酸が含有されているため、尿石による汚れを洗浄することができます。


鉄など金属汚れを洗浄

サンポールに含まれる塩酸(無機酸)は、金属類を溶解する能力に優れているので、鉄分汚れや鉄サビ汚れなどもよく落とすことができます。

有機酸としては、食酢に含まれる酢酸・
グリコール酸・ホウレンソウなどに含まれるシュウ酸などががあります。これらは塩酸よりも溶解力が弱いのですが、鉄分汚れ落としとして有効です。


無機物(金属イオン)汚れを洗浄

トイレのルックに含まれるスミルファミン酸(無機酸)は、カルシウム塩やマグネシウム塩の溶解力が優れています。水道水に含まれるカルシウムイオンやマグネシウムイオンによる汚れ(スケール、ウォータースポット、イオンデポジット、無機物汚れ)をよく落とすことができます。

有機酸としては、レモンなどの柑橘類に含まれるクエン酸や、食酢に含まれる酢酸などがカルシウムイオンなどによる無機物汚れ落として有効です。



無機物(シリカ)汚れを洗浄

シリカ(SiO2)を溶解できる酸はフッ化水素です。フッ化水素はガラスを擦りガラスに加工したり、ガラスに模様を入れるなどのエッチング加工に使用されるものです。

フッ化水素(水溶液はフッ化水素酸あるいはフッ酸と呼ばれる)は、法令で毒物に指定されています。フッ化アンモニウムあるいは、フッ化水素アンモニウム・フッ化ナトリウムもシリカ=ガラスを溶解します。いずれも大変に危険な物質です。


コーティングと酸

弊社のコーティングは「シリコーンレジンコーティング」、「業務用ガラスコーティング」ともに、酸に強いシロキサン骨格構造のケイ素化合物です。このため、酸性雨をはじめ、さまざまな酸に対しても高い耐力を有しています。

ただし、上記のシリカ汚れを落とすフッ化水素などについては、全てのコーティングが落ちてしまいます。この場合は容易に窓ガラス、塗装、金属部分、人間の皮膚や骨も溶解しますので細心の注意が必要です。


(参考)酸に由来する汚れついてはこちらをご覧ください→ウォータースポット(イオンデポジット)とは


自動車と酸

自動車はボディ・フレームをはじめ、エンジン、サスペンション、ブレーキ、ホイール、マフラーなど金属の塊です。


このため、金属汚れや無機物汚れを落とすために酸を使用することは、自動車の様々な部分の金属腐食を促進させてしまうため、使用しないことが重要です。

塩酸を使用しますと、塩酸は常温で塩化水素として蒸発するため、塩酸(水溶液)が金属に付着しないように作業したとしても、気体として雰囲気を汚染し金属を腐食させることがあります。

フッ化水素やフッ化ナトリウム・フッ化アンモニウムなど、シリカガラスを溶かすものは、金属・ガラス・塗装や人体の皮膚・骨を強力に溶解し、失明や癌リスクが高まります。


自動車や人と環境にとって、非常に危険性が高いことを認識し、使用は絶対に避けなければなりません。

ホイールやボディに付着した鉄粉を除去するものとして、グリコール酸を使用した洗浄液があります。これはグリコール酸が鉄を溶解する能力を利用しているのですが、酸をアンモニア水溶液などのアルカリで中和しているものです。このような自動車・洗車用に調整された鉄粉除去用のものは、洗浄後に洗浄液が付着したままにせず、よく水で洗い流すことが必要です。







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